「出っ歯を押してたら治った」はウソ!歯を押すことの3大リスク

「出っ歯を押してたら、少し動いた気がする」
「ネットで出っ歯が治ったって見たけど、本当?」
このような疑問を持っていませんか?
結論からお伝えすると、大人の出っ歯を自分で押して治すことはできません。それどころか、歯や歯茎に深刻なダメージを与え、将来的に歯を失うリスクさえあります。
この記事では、なぜ自分で出っ歯を押すのが危険なのか、その3大リスクを解説します。
危険な自己判断で後悔する前に 、まずはこの記事で正しい知識を身につけましょう。

目次
- 「出っ歯は押してたら治った」は本当?ネットや知恵袋の噂を解説
- 出っ歯を指で押し 続けるのは危険!歯に起こる3大リスク
- ①歯の根が溶けて短くなる(歯根吸収)
- ②歯茎が下がり元に戻らなくなる(歯肉退縮)
- ③全体の噛み合わせが悪くなる
- なぜ歯科矯正では歯が動く?「自分で押す力」との違い
- 「押す」以外の安全な治し方とは?出っ歯は歯科矯正で改善できる
- 表側矯正
- 裏側矯正
- ハーフリンガル矯正
- マウスピース矯正
- 出っ歯を押すことに関するよくある質問・疑問(FAQ)
- 押したら少し動いた気がします。このまま続ければ治る?
- 出っ歯を治すためのトレーニングやマッサージはある?
- 子どもの出っ歯も、少し押してあげるのはダメ?
- 出っ歯を押して治すのはNG!正しい矯正で後悔しない治し方を

結論からお伝えすると、大人の出っ歯を指で押して治すことは、医学的に不可能です。
ネット上で見かける「治った」という話は、以下のようなケースが考えられます。
もともと出っ歯ではなかった
乳歯から永久歯への生え変わりの時期で一時的に歯が動いただけだった
勘違いで改善したように見えているだけ
特に成長期の子どもの場合、顎の成長や歯の生え変わりで歯並びはダイナミックに変化します。
そのため、たまたま指で押していたタイミングと、歯並びが自然に変わったタイミングが重なっただけ、という可能性が高いのです。
大人の場合、歯は顎の骨にしっかりと固定されています。それを素人が無理やり動かそうとすれば、歯やその周りの組織にダメージを与えてしまうだけ。決して「良い方向」に動くことはありません。
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「ちょっと押すくらいなら大丈夫じゃない?」と思うかもしれません。
しかし、継続的に歯に不適切な力がかかると、歯や歯茎の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
①歯の根が溶けて短くなる(歯根吸収)
私たちの歯は、顎の骨の中に「歯根(しこん)」と呼ばれる根っこの部分が埋まることで支えられています。
ここに不規則で強すぎる力が加わり続けると、歯の根っこが短くなってしまうことがあるのです。これを専門用語で「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」と呼びます。
歯を支える根っこが短くなってしまうと、最悪の場合グラグラになり、歯が抜けてしまうことさえあります。
②歯茎が下がり元に戻らなくなる(歯肉退縮)
歯だけでなく、歯を支える歯茎も非常にデリケートです。
歯を無理に押す力は、歯茎にとって大きなストレス。そのスト レスから逃げようとして、歯茎はどんどん下の方へ縮こまっていきます。これを「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」と言います。
一度下がってしまった歯茎は、残念ながら自然に元の位置へは戻りません。歯が長く見えて老けた印象になったり、歯の根っこが露出して冷たいものや風がしみる「知覚過敏」の原因になったりします。
③全体の噛み合わせが悪くなる
仮に、出っ歯の一本だけを無理やり引っ込めることができたとしましょう。しかし、その歯は引っ込んでも、隣の歯や下の歯とのバランスはガタガタになってしまいます。結果として、
食べ物がうまく噛み切れなくなる
特定の歯にだけ負担がかかり、その歯の寿命を縮める
顎の関節に負担がかかり、顎関節症や頭痛・肩こりの原因になる
など、お口全体の健康を損なう状態を自分で作り出してしまうことになりかねません。

なぜ歯科矯正は安全に歯が動かせるのか疑問に思う方もいるでしょう。
歯科矯正と自分で押す力との決定的な違いは、力のコントロールと緻密な計画にあります。
歯科矯正は、歯や骨がゆっくりと生まれ変わる体の仕組みを利用して歯を動かす治療法です。
歯に適切な力を加えると、動かしたい方向の骨が少しずつ溶けてスペースを作り、歯が動いた後の隙間には新しい骨が作られていきます。
歯科矯正ではこの反応を促すために、数十グラム程度の非常に弱い力を、持続的にかけ続けるのです。
レントゲン撮影やシミュレーションなども活用し、どの歯をどの方向へ何ミリ動かすか、すべてを計算した上で治療を進めていきます。
一方、ご自身で歯を押す力は、強さが不規則で方向も定まりません。これは歯にとってコントロール不能な力となってしまい、ダメージだけが蓄積していくことになります。
たとえるなら、歯科矯正は建築家が設計図通りにミリ単位で家を建てるようなもの。一方で、自分で歯を押すのは、知識のないまま家の基礎をハンマーで叩いているようなもの。
どちらが安全で、理想の形になるかは一目 瞭然ですよね。
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出っ歯を安全に治したいなら、やはり歯科医師に相談するのが一番の近道です。歯科矯正には、主に以下のような方法があります。

表側矯正
歯の表面(唇側)にブラケットとワイヤーと呼ばれる矯正装置をつける方法です。
抜歯をともなう治療にも対応可能で、多くのクリニックで採用されています。
裏側矯正
歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーをつけて矯正する矯正方法です。
歯の裏側につけるブラケットをリンガルブラケットといい、「リンガル矯正」とも呼ばれています。
ハーフリンガル矯正
ハーフリンガル矯正とは、上顎を裏側矯正、下顎を表側矯正で行う方法です。
装置が目立ちやすい上あごを裏側矯正で行うので、周囲の人に気づかれずに歯並びが整えられるのがメリット。
また、適応症例はワイヤー矯正と変わらないため、マウスピース矯正では難しい症例にも対応できます。
マウスピース矯正
マウスピースを使って歯並びを矯正する方法です。理想の歯並びに近づくように作られたマウスピースを適切なタイミングで交換し、徐々に歯を動かします。
マウスピースは透明なので、装着していることがわかりにくいです。
以下の記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
「矯正って、痛そうだし、時間もお金もかかりそう…」と不安に感じるかもしれません。しかし最近では、治療期間が短く、費用を抑えられるプ ランも増えています。

マウスピース矯正Oh my teethなら、通院は原則不要。LINEやビデオ通話でドクターのサポートを受けながら、自宅で矯正を進められます。

自分で歯を押して後悔するリスクを考えれば、まずは一度、自分の歯がどんな状態で、どんな治療法が合うのかを診てもらうことが最短ルートです。

ここでは、出っ歯を押すことに関するよくある質問を紹介します。
押したら少し動いた気がします。このまま続ければ治る?
いいえ、絶対に続けないでください。
動いたように感じたのは、歯がダメージを受けて少しグラついている可能性があります。すぐに押すのをやめて、一度歯科医院で状態をチェックしてもらうことを強くおすすめします。
出っ歯を治すためのトレーニングやマッサージはある?
出てしまった歯を治す効果のあるトレーニングやマッサージはありません。
ただし、舌で前歯を押す癖(舌突出癖)や口呼吸などを改善する「口腔筋機能療法(MFT)」というトレーニングはあります。これは、これ以上出っ歯を悪化させないための予防や、矯正治療後の後戻り防止には有効です。