歯科矯正
最終更新日:2025年7月31日
歯科矯正は医療費控除の対象?戻ってくる金額や申請方法をわかりやすく解説

歯科矯正も医療費控除の対象になることをご存じですか?
医療費控除とは、1年間で支払った医療費が一定額を超えた場合に税金の一部が戻ってくる制度です。
この記事では、歯列矯正の医療費控除について、知っておくべき情報をまとめました。
- 自分は対象?が一目でわかるフローチャート
- 対象になる3つの絶対条件
- いくら戻る?還付金の計算シミュレーション
- 5ステップで完了する申請手続きの完全ガイド
この記事を読み終える頃には、医療費控除を賢く活用し、矯正治療の費用負担を軽くするための具体的な方法がわかります。

目次
- 【1分で診断】あなたの歯列矯正は医療費控除の対象?フローチャート
- 歯列矯正が医療費控除の対象になる「3つの条件」
- 条件①:年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えている
- 条件②:審美(見た目)目的ではなく「治療目的」である
- 条件③:歯科医師による診断・治療を受けていること
- 歯列矯正の医療費控除、還付金はいくら返ってくる?計算方法とシミュレーション
- 還付金の計算は2ステップでわかる!
- 【費用別】医療費控除の還付金シミュレーション
- 【5ステップで完了】歯列矯正の医療費控除の申請手続き
- Step1:必要書類を準備する【チェックリスト付き】
- Step2:「医療費控除の明細書」を作成する
- Step3:確定申告書を作成する
- Step4:税務署に提出する(スマホでのe-Taxがおすすめ)
- Step5:約1ヶ月後に還付金が振り込まれる
- 歯列矯正の医療費控除で損しないための5つの重要ポイント
- ① ローン・分割払いでも支払った年に控除対象になる
- ② 家族全員分の医療費を合算して10万円以上なら申請可能
- ③ 公共交通機関の交通費も忘れずに医療費に含める
- ④ 申請忘れも大丈夫!5年前までさかのぼって申告できる
- ⑤ 会社員も確定申告が必須!年末調整では控除されない
- 歯科矯正の医療費控除でよくある質問(FAQ)
- 矯正通院時の交通費の領収書がない場合、メモ書きでも認められますか?
- 過去に申告し忘れた医療費控除は、今年の確定申告と一緒にできますか?
- 医療費が高額だった年、所得が高い夫(妻)が申請した方がお得ですか?
- 住民税非課税世帯も医療費控除の申請をした方がいいですか?
- 大人と子どもで医療費控除になる違いはある?
- 歯科矯正で医療費控除対象となる症例は?
- 医療費控除をうまく活用して税金の負担を軽くしよう
【1分で診断】あなたの歯列矯正は医療費控除の対象?フローチャート
まずは、ご自身の状況が医療費控除の対象になる可能性があるか、簡単なフローチャートでチェックしてみましょう。

このフローチャートで「対象になる可能性が高い!」となった方は、次のセクションで詳しい条件を確認していきましょう。
もし「対象にならないかも」という方も、すぐにあきらめずまずは矯正歯科に相談してみることが大切です。
マウスピース矯正Oh my teethでは、無料カウンセリングを実施しています。医療費控除のご相談も承っているので、ぜひお気軽にご相談ください。
歯列矯正が医療費控除の対象になる「3つの条件」

歯科矯正で医療費控除を受けるためには、基本的に以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
そもそも、医療費控除とは?
医療費控除とは、1年間にかかった医療費が10万円を超えた場合に適用される所得控除制度です(総所得金額200万円未満の方は総所得金額の5%が基準)。
医療費控除を利用すると、かかった医療費の一部が所得から差し引かれ、会社員の場合は、年末調整や確定申告で払いすぎた税金が戻ってきます。自営業の場合は、納める税金が安くなります。
たとえば、医療費控除で戻って来る金額は、マウスピース矯正で100万円支払った場合は18万ほどです。ただし、所得によって控除される金額は変動します。
※総所得金額が600万円、補填金が0円の場合の一例。所得税率は記事更新時点。
条件①:年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えている
医療費控除は、1月1日〜12月31日までの1年間で支払った医療費の合計が、原則として10万円を超える場合に申請できます。

ただし、年間の総所得金額が200万円未満の場合は、「総所得金額 × 5%」を超えた金額が基準となります。
歯列矯正は自由診療で高額になることが多いため、多くの場合この条件はクリアできるでしょう。
条件②:審美(見た目)目的ではなく「治療目的」である

医療費控除は、病気やケガの「治療」にかかった費用を対象とする制度です。
そのため、単に「見た目を良くしたい」という審美目的のみの歯列矯正は、対象外となります。
一方で、以下のような「機能的な問題」を解決するための矯正治療は、医療費控除の対象となる可能性が非常に高いです。
- 噛み合わせが悪く、しっかり噛めない(咀嚼機能の問題)
- サ行・タ行などが発音しにくい(発音機能の問題)
- 歯並びのせいで、虫歯や歯周病になりやすい
- 顎の成長を阻害している(子どもの場合)
「コンプレックス解消」がきっかけで矯正を始めた方でも、歯科医師の診察によって上記のような「治療の必要性」が認められれば、医療費控除の対象になりえます。
条件③:歯科医師による診断・治療を受けていること
当然ですが、医療費控除は「医療」にかかった費用が対象です。そのため、歯科クリニックで、歯科医師の診断のもとに行われた矯正治療である必要があります。
巷にあるような、科学的根拠のないセルフケアグッズや整体などは、対象になりません。
歯列矯正の医療費控除、還付金はいくら返ってくる?計算方法とシミュレーション

「じゃあ、実際にいくら戻ってくるの?」 ここでは、還付金の計算方法と、具体的なシミュレーションを見ていきましょう。
還付金の計算は2ステップでわかる!
還付金の計算は、2つのステップで簡単に算出できます。
- STEP1:医療費控除額を計算する
医療費控除額 = (年間に支払った医療費の合計額) - (保険金などで補填された額) - 10万円
※ 上限200万円
※ 総所得200万円未満の場合は10万円の代わりに「総所得 × 5%」 - STEP2:還付金を計算する
還付される所得税額(目安) = (STEP1で計算した医療費控除額) × (あなたの所得税率)
つまり、控除対象となる医療費のうち、あなたの所得税率の分だけが戻ってくるという仕組みです。
所得税率の早見表
還付金の計算を行う時には、所得税率を把握する必要があります。
所得税率は所得によって違うため、以下の表を目安にして確認してください。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万~330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万~695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万~900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万~1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万~4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁
【費用別】医療費控除の還付金シミュレーション
実際に歯列矯正で費用を支払った場合の、還付金の目安をシミュレーションしてみましょう。
※保険金などによる補填は0円と仮定します。
※保険金などによる補填は0円と仮定します。
年間の課税所得 | 矯正費用 | 医療費控除額 | 還付金額(目安) |
---|---|---|---|
300万円 (税率10%) | 40万円 | 30万円 | 約30,000円 |
80万円 | 70万円 | 約70,000円 | |
500万円 (税率20%) | 40万円 | 30万円 | 約60,000円 |
80万円 | 70万円 | 約140,000円 | |
120万円 | 110万円 | 約220,000円 | |
700万円 (税率23%) | 80万円 | 70万円 | 約161,000円 |
120万円 | 110万円 | 約253,000円 |
このように、所得が高く、支払った医療費が多いほど、戻ってくる金額も大きくなります。

【5ステップで完了】歯列矯正の医療費控除の申請手続き
医療費控除の申請は、会社員の方でも「確定申告」で行う必要があります。
難しそうに聞こえますが、以下の5ステップで誰でも簡単に行えます。
該当する医療費について詳しくは、国税庁のホームページで確認してください。
Step1:必要書類を準備する【チェックリスト付き】
まずは、確定申告に必要な書類を手元に準備しましょう。
【必要書類チェックリスト】
- [ ]源泉徴収票(会社員の場合)
- [ ]医療費の領収書(1年分をまとめておく)
- [ ]保険金などで補填された金額がわかるもの(該当者のみ)
- [ ]マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
- [ ]還付金の振込先口座がわかるもの(通帳やキャッシュカード)
- [ ]印鑑(認印でOK)
Step2:「医療費控除の明細書」を作成する
2017年から領収書の提出は不要になり、代わりに「医療費控除の明細書」を作成・提出する形式になっています。
国税庁のホームページからフォーマットをダウンロードし、医療を受けた人ごと、病院ごとに支払った医療費を記入していきます。
※提出不要になった領収書も、税務署から提示を求められることがあるため、5年間は自宅で保管しておきましょう。
Step3:確定申告書を作成する
「確定申告書」に、源泉徴収票の内容や、Step2で計算した医療費控除額などを記入していきます。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って入力するだけで、税金の計算なども含めて自動で書類が作成できるので非常に便利です。
▷参考: 国税庁 確定申告書等作成コーナー
Step4:税務署に提出する(スマホでのe-Taxがおすすめ)
作成した確定申告書と必要書類を、翌年の2月16日〜3月15日の間に税務署に提出します。
【提出方法】
- e-Taxで電子申告する(最もおすすめ)
- 税務署に直接持参する
- 税務署に郵送する
e-Taxはマイナンバーカードと対応スマホがあれば、自宅から24時間いつでも提出可能なので便利です。
e-Taxについて
e-Taxはマイナンバーカードと対応スマホがあれば、自宅から24時間いつでも提出可能なので便利です。
マイナンバーカードと健康保険証を紐付けし、マイナポータルと連携することで、確定申告の手続きが簡単にできるようになりました。
確定申告時に1年分の情報を一括取得し、確定申告書に自動入力・提出できます。
医療費控除のために確定申告をするのは面倒だと感じている方は特に、マイナポータル連携を試してみてください。
※保険適用外の費用はマイナポータルの医療費通知情報に含まれませんのでご注意ください。
用意するもの
マイナポータル連携に必要なものは、下記の通りです。
- マイナンバーカード
- パスワード
利用者証明用電子証明書のパスワード:数字4桁
著名用電子証明書のパスワード:英数字6〜16文字 - マイナンバーカード読み取り機能に対応しているスマートフォン(ICカードリーダーライタ)
特に、使用するスマートフォンがマイナンバーカード読み取り機能に対応したものかを確かめておきましょう。
対応しているスマートフォンに関する情報は、デジタル庁の公式サイトを確認してください。
Step5:約1ヶ月後に還付金が振り込まれる
申告内容に問題がなければ、申告からおよそ1ヶ月〜1ヶ月半後に、指定した口座に還付金が振り込まれます。
e-Taxで申告した場合は、3週間程度で処理されることもあり、スピーディーです。
歯列矯正の医療費控除で損しないための5つの重要ポイント
最後に、医療費控除を最大限に活用し、損をしないための重要なポイントを5つご紹介します。
① ローン・分割払いでも支払った年に控除対象になる
デンタルローンやクレジットカードの分割払いで支払った場合も、医療費控除の対象です。
ポイントは、信販会社がクリニックに治療費を立替払いした年(=ローン契約が成立した年)の医療費として、全額を一度に申告できる点です。
実際にあなたが分割で支払っている年ごとではないので、注意しましょう。金利や手数料は控除の対象外です。
② 家族全員分の医療費を合算して10万円以上なら申請可能
医療費控除は、「生計をともにする家族」の医療費をすべて合算して申請できます。
例えば、共働きで扶養に入っていない配偶者や、仕送りをしている子どもの医療費もまとめてOKです。
自分の矯正費用だけでは10万円に届かなくても、家族の分を合わせることで対象になる可能性があります。
③ 公共交通機関の交通費も忘れずに医療費に含める
矯正治療のための通院にかかった、電車やバスなどの公共交通機関の交通費も、医療費に含めることができます。
領収書が出ない場合がほとんどですが、日付、交通機関、経路、運賃などを記録したメモ書きで問題ありません。
※自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代は対象外です。
④ 申請忘れも大丈夫!5年前までさかのぼって申告できる
「去年、矯正費用を払ったのに申請し忘れた…」という方もご安心ください。
医療費控除の申請(還付申告)は、対象となる年の翌年1月1日から5年間行うことができます。
諦めずに、過去の領収書を探してみましょう。
⑤ 会社員も確定申告が必須!年末調整では控除されない
医療費控除は、生命保険料控除などとは異なり、会社の年末調整では手続きできません。
会社員の方でも、ご自身で確定申告を行う必要があります。「知らなかった」では税金は戻ってきませんので、必ず覚えておきましょう。
歯科矯正の医療費控除でよくある質問(FAQ)
ここでは、歯科矯正の医療費控除に関するよくある質問をご紹介します。
矯正通院時の交通費の領収書がない場合、メモ書きでも認められますか?
はい、認められます。 国税庁も、領収書のない交通費については、日付、利用した交通機関、経路、運賃などを記録したメモ書きで良いとしています。エクセルなどで一覧表にしておくと、明細書を作成する際に便利です。
過去に申告し忘れた医療費控除は、今年の確定申告と一緒にできますか?
いいえ、一緒にはできません。 確定申告は、年ごとに行う必要があります。
例えば、2024年分と、申告し忘れた2023年分の医療費控除を申請したい場合は、それぞれ別々に確定申告書を作成し、提出する必要があります。
医療費が高額だった年、所得が高い夫(妻)が申請した方がお得ですか?
はい、その可能性が高いです。還付される金額は「医療費控除額 × 所得税率」で決まるため、所得税率が高い(=所得が高い)人が申請した方が、戻ってくる金額は大きくなります。
家族の中で最も所得が高い人がまとめて申告するのが、一般的に最もお得な方法です。
住民税非課税世帯も医療費控除の申請をした方がいいですか?
医療費控除は、所得税の還付を受ける制度のため、非課税世帯の方が申告しても還付金はありません。
大人と子どもで医療費控除になる違いはある?
歯科医師が「歯並びや噛み合わせが子どもの成長を阻害する」と判断し、そのために歯科矯正治療を行った場合は医療費控除の対象になります。
大人の場合は、噛む機能を取り戻す治療が目的であれば、ワイヤー矯正やマウスピース矯正といった治療方法に関係なく医療費控除の対象です。
つまり大人・子ども関係なく、機能改善目的で行われる歯科矯正の費用は、原則として医療費控除の対象になります。
大人の場合は、噛む機能を取り戻す治療が目的であれば、ワイヤー矯正やマウスピース矯正といった治療方法に関係なく医療費控除の対象です。
つまり大人・子ども関係なく、機能改善目的で行われる歯科矯正の費用は、原則として医療費控除の対象になります。
歯科矯正で医療費控除対象となる症例は?
歯並びの治療が医療費控除の対象になるかどうかは、歯並びの症状によって異なります。
医療費控除の対象となる可能性のある、5つの症例を紹介します。
- すきっ歯:前歯に隙間がある歯並び
- 出っ歯:上の前歯が出ている歯並び
- デコボコな歯並び:不揃いな歯並び
- 受け口:下の前歯が上の前歯よりも前に出ている歯並び
- 開咬(かいこう):奥歯で噛んでも前歯が噛み合わない歯並び
いずれも食べ物をうまく噛めなかったり、発音が不明瞭になったりと機能的に問題がある場合は、医療費控除の対象になります。
あなたの歯並びが医療費控除の対象になるかどうかは、歯科医師に相談してみましょう。
医療費控除をうまく活用して税金の負担を軽くしよう
歯科矯正の費用は、医療目的であれば医療費控除の対象になります。
医療費控除は税金が還付される制度なので、もし利用できるのであれば使わない手はありません。
そして、医療費控除の申告をするためにも歯科医院で診断書を発行してもらいましょう。
診断書なしでも確定申告はできますが、診断書の提出を求められたときに対応できないと、受理してもらえない確率が高くなります。
歯科矯正を検討している方は、医療費控除の制度を上手に活用しましょう。